ベタは飼育のしやすさ、個性的な性格、そして様々な色彩と優雅なヒレで見るものに癒やしを与えてくれる、とても美しい観賞魚です。「熱帯魚に興味はあるけど飼育が難しそう……」という方に是非おすすめしたいベタ。ここではベタの特徴やその魅力をたっぷりとお届けします!
目次
ベタとは……
ベタはタイのメコン川周辺が原産のラビリンスフィッシュという種類の淡水魚です。ラビリンスフィッシュという名前は、空気呼吸ができる”ラビリンス器官”を持つことからそう呼ばれています。(グラミーなどもラビリンスフィッシュの仲間として知られています。)その事から「コップ(ビン)で飼える」淡水魚として有名になりました。
また、ベタは別名「闘魚」とも言われます。ベタは縄張り意識を持っており、自分の縄張りに入ってきたものを容赦なく威嚇・攻撃する気性の荒さを持っています。特にオスの方が気性が荒い傾向がありますがメスであっても同種間で激しく争う為、タイでは古くから賭けの対象として扱われ、より強い個体を作出するため改良品種が繰り返されてきました。
初めてベタを飼育するなら、複数匹ではなく、まずは単独飼育をオススメします。(後述しますが、単独飼育でもベタの飼育の楽しさは存分に味わえます。)
ベタは本当にコップで飼えるの!?
結論から言ってしまうと「飼えます」!
ベタが「コップ(ビン)で飼える」と言われる所以はズバリ、空気呼吸ができるからです。ベタはエラ蓋の中に”ラビリンス(迷宮のような構造の為)器官”という、空気呼吸ができる特殊な器官を持っており、口を水面から出して空気を吸い込み、酸素を取り込む事が出来るのです。
その為、熱帯魚や観賞魚の飼育で必要とされるエアーレーション(いわゆるブクブク、水中に酸素を溶け込ませる為のもの)をする必要がありません。
またベタは水の流れを嫌います。エアレーションで水面が波立つように水流が起こってしまうとベタにとってはストレスになってしまいます。ショップなどではかなり小さな容器に入れられて販売されており、「こんなに小さな所で大丈夫なの……?」と思った方も多いと思いますが、あの状態がベタにとっては割と落ち着く状態なのです。
また同じ理由で水をろ過をするフィルターなどの装置もいりません。ベタは水流のない環境が落ち着きますので、フィルターではなく水換えで水質を維持しましょう。
ただ、容器が小さければ小さいほど当たり前ですが水の量は少なくなります。ベタも生き物ですので餌を食べたらフンをします。もちろんフンだけでなく餌の成分や食べ残しなどで水は汚れます。そうした時、水の量が少ないということは水が汚れるのも早いという事です。水が汚れる事でベタが病気になる危険性が増加します。
安定的な飼育をするならコップでの飼育はオススメしません。また、ベタは跳ねることもあるため、蓋のない小さな容器での飼育は避けた方が無難です。「でも水槽ほど大きいのは嫌だし……」という方にオススメしたいのが金魚鉢です。
金魚鉢ならある程度の水量があるので水が急激に汚れる事もありませんし、中央に水草などを入れる事で水質浄化作用にもなります。
また金魚鉢は球体なので中央に水草を入れてもベタが泳ぐことのできる遊泳域が水草の周りにしっかりと確保されています。さらに少し水面を低くしておけば飛び出しの心配もありません。
そして何よりオシャレで可愛い!ベタの入った金魚鉢をお部屋に置くだけで……もはやインテリアです!(もちろん命のある生き物ですので大切に飼育をしましょう。)
ベタを飼育する時に知っておきたい飼育環境について
<体長>約7cm
ベタは比較的小さなサイズですが、その色彩の美しさやヒレの長さからとても存在感のある魚で古くから観賞魚として親しまれています。特に観賞用に改良品種された「ベタ・トラディショナル(トラベタとも言われます)」は派手で鮮やかな色彩が多く、ショップなどでも一番多く流通している種類です。1匹であれば金魚鉢や小型水槽がオススメです。
<水温・水質>20~28℃・弱酸性~中性(pH5.5~7)
ベタはとても丈夫で比較的幅広い水温に対応できます。さすがに冬はヒーターが必要ですので予め用意しておきましょう。
水質ですが、ベタはpHが高い水(アルカリ性に近づく水)を好みません。その為pHを下げるソイル(土を焼き固めたもの)を敷くのもオススメです。
元々はブラックウォーターと呼ばれる環境に生息しているベタの水槽には流木なども入れるといいのですが、美しいヒレが傷ついてしまったり傷口から病気になってしまう可能性もありますのであまりオススメしません。
レイアウトの素材としてはヒレを傷つけない柔らかい水草がオススメです。また、ブラックウォーターを簡単に作れる「アンブレラリーフ」や「やしゃぶしの実」なども手軽で効果的です。
水換えの際は汚れた水を抜き取り(小さな容器であればスポイトなどで)、カルキ抜きをした新鮮な水を入れましょう。
カルキ抜きはコレがオススメです。エラや粘膜の保護、重金属の無害化、白にごりの除去の効果もある優れものです。大量に入っているので1本あればかなり長期間使えるハズです。
<餌(エサ)>人工飼料・生き餌
人工飼料や糸ミミズ、冷凍アカムシなどの生き餌を食べます。基本的には人工飼料でいいと思いますがショーベタなど人工飼料を好まない種類もいますので、個体によっては生き餌を与えるといいでしょう。人工飼料の場合は食い付きが抜群にイイこの餌がオススメです。
<寿命>約3~5年
飼育する環境による所が大きいですが、一般的な寿命です。このサイズにしては比較的長生きする方なので是非じっくりと飼い込んであげて下さい。
<混泳>小型のカラシンやオトシンクルスなど
ベタは同種にはとても気が荒くなりますが、他種に対しては温厚で混泳も可能です。ベタのヒレをつっつくような乱暴な魚でなければ特に問題はありません。また、ビーシュリンプやミナミヌマエビなどの小さなエビはベタの格好の餌となってしまいますので混泳は禁物です。不安な方はやはりベタのみの単独飼育がオススメです。
ベタの飼育をするなら是非やりたい「フレアリング」
フレアリングとは、相手を威嚇する時、またはメスへの求愛をする時に行う行為です。ヒレを大きく広げ口の周りも力いっぱい膨らませ相手に存在をアピールします。この行為が非常に可愛く、ヒレをより美しく大きくする効果もあるので是非やってあげてください。
やり方は簡単!隣に別のベタを置くか、鏡を置くだけ!
動画(約1分30秒)もあります。角度的に若干見にくいですが参考までに。
自分の姿を縄張りに入ってきた別の個体と勘違いして(求愛か?笑)フレアリングを行います。フレアリングをすることで力いっぱいヒレを使う為、人間で言う筋トレのような効果でヒレが発達しドンドン美しくなっていきます。形の美しいベタに育てたい場合、このフレアリングは必須と言っても過言ではありません。
※フレアリングはベタにとってはとても疲れる行為の為、1日10分程度にしてあげましょう。
また、容器は別々でもベタを複数匹並べて飼育する時は注意が必要です。ベタ同士が延々とフレアリングをしてしまいストレスで参ってしまうためです。容器と容器の間にダンボールで目隠しをするなどして他のベタが見えないような環境を作り、ベタに過度なフレアリングをさせないようにしましょう。
ベタの繁殖について
ベタを飼育していると水面に泡が溜まっている光景を目にします。ベタは「バブルネストビルダー」と言われる特性を持っており、これはオスが水面に泡巣を作りそこで卵を孵化させるというものです。ベタの飼育に慣れてきて繁殖にチャレンジしたい方は是非挑戦してみましょう。
ただ、ベタはやはり同種間で激しく争う傾向にありますので十分に成熟したペアでないと繁殖は難しいでしょう。また、サイズが極端に違ってもただの弱い者いじめになってしまうのでサイズは合わせましょう。
十分に成熟したペアであれば、オスは泡巣を作り、メスは腹部が膨らみ抱卵します。この時、泡巣が作りやすいよう浮草などを水面に浮かべるのもオススメです。
ベタの産卵はとても情熱的で、しばしばこの光景が話題に上がります。オスが長いヒレを絡ませるようにしてメスにベッタリ(ベタだけに)と絡みつき、メスが産み落とした卵をせっせと泡巣に運びます。オスはそのまま卵が孵化するまで泡巣を守り続けます。(健気……)この時オスの邪魔をしないよう、メスは産卵後速やかに別の容器に移しましょう。
無事に稚魚が生まれたら、今度はオスを別の容器に移しましょう。ここからは稚魚の飼育に集中します。
稚魚はとても小さいので初期の餌やりには注意が必要です。大きい餌は食べられないので最初はインフゾリア(ゾウリムシ)などの微生物を用意する必要があります。ある程度育ったらブラインシュリンプに切り替えていきます。餌の残りなどで水質が急激に変化しやすくなりますので、適度な水換えで水質を安定させる事を意識しましょう。
ベタの飼育は本当に簡単なのか!?
ベタはとても丈夫で、繁殖を狙わない通常の飼育であれば初心者の方でもうまくいく可能性がとても高い観賞魚です。
フィルターやエアレーションを必要としない為、手間となるのは水換えくらいだと思います。水量が少なければ少ないほど水が汚れるスピードが早いため、水換えの頻度は高くなります。
30cm水槽であれば2週間に1回、1/3程度の水換えで十分と言われていますので、飼育する容器に合わせて水換えの頻度は調整して下さい。あまり頻繁に水換えを行うのもストレスになるためオススメしません。金魚鉢であれば1週間に1回、1/3程度の水を交換するくらいでしょうか。
ベタの飼育は他の熱帯魚に比べれば圧倒的に簡単です。そして単独飼育でも圧倒的な存在感で空間を支配し、優雅な泳ぎでインテリアと呼べるほどの美しさを見せてくれます。さらに一生懸命にヒレを広げるフレアリングも可愛いかったり、餌をあげようとすると寄ってくるようになったりと、人になつく微笑ましい一面もあります。
<代表的なベタの種類>お気に入りのベタを見つけよう!
ベタ・トラディショナルは、観賞魚として見栄えを良くした改良品種です。原種と比べ大きく伸長したヒレと鮮やかな色彩が魅力で、ショップなどに流通する多くがこのトラディショナルです。同じトラディショナルでも赤や青など様々な色彩の個体が存在しており、飼育をする前から選ぶ楽しさも味わえます。
ベタ・ハーフムーンは、半月のように大きく丸い尾ビレがとても美しい種類です。尾ビレにある”軟条”がトラディショナルよりも多く、大きな尾ビレを支える事が可能になっています。尾ビレの開きが約180度であれば「ハーフムーン」、それ以上に大きく開く尾ビレであれば「オーバーハーフムーン」と呼ばれ重宝されます。ハーフムーンは【ショウクオリティのベタ(ショウベタとも呼ばれる)】と言われ、その美しさを競うコンテストも世界中で開かれており、海外でも人気の高い種類です。
ベタ・プラガットは、最も原種に近い種類とされています。トラディショナルと比べるとヒレは短く、野性的な雰囲気は健在です。ヒレが短い為、ヒレが傷つき病気になってしまうリスクが低いメリットがあります。近年ではプラガットの「ハーフムーン」タイプも作出され人気を博しています。
ベタ・クラウンテールは、その名のとおり王冠(クラウン)のようなギザギザのヒレが特徴的な種類です。軟条の切れ込みが深い個体ほど美しいとされる一方で、尾ビレがあまり開かないという面もあります。ちなみに切れ込みが浅いものは「コームテール」などと呼ばれます。そしてクラウンテールのショウクオリティともなると、先端の開きが特に大きな「キングクラウンテール」や、尾ビレの先端が交差する「Xレイ」、「Xクロス」と呼ばれる個体もおり、非常にコレクション性の高い種類となっています。
ベタ・スーパーデルタテールは、【ショウクオリティのベタ(ショウベタとも呼ばれる)】の元祖とも言われる代表的な種類です。ここから「ハーフムーン」や「オーバーハーフムーン」などが作出されたと言われており、ショウベタを語る上で外すことのできない種類です。
ベタ・ダブルテールは、尾ビレの中央が開き2つに分かれている種類です。この尾ビレがハートに見える事から女性人気も高い種類ですが、尾ビレが綺麗に真ん中で分かれている個体が少なく、また尾ビレ付近に奇形が出やすい面もあるなど個体差がかなり大きい種類です。欠点があまりない個体はとても美しく、ショウベタとしても活躍できます。
まとめ
ここまでベタの特徴や飼育方法など綴ってきましたが、ベタの魅力はしっかりと伝わったでしょうか!?
ベタは今なお品種改良が行われ、日々新たな美しさを持った個体が生まれています。また、同じ種類でも色彩は多岐に渡り、赤や青、白や黒やマーブルなど様々な色や模様の個体が存在します。そんな中から是非自分好みのお気に入りのベタを見つけてじっくりと飼育してみて下さい♪