「アクアリウムなんて水槽に石とか草とか入れて生き物を入れるだけでしょ?」と思っている方も多いと思います。確かに間違いではありませんが、見惚れてしまうような綺麗な水槽では、得てして「バクテリア」という小さな存在が非常に大きな仕事をしている事を知っておいて下さい。バクテリアの大切さを知る事で水質維持がグンと楽になります!
バクテリアとは
バクテリアは目には見えないほど小さな細菌です。
バクテリアは水草や生体についている場合もありますし、空気中のホコリなどにも存在します。もちろん水槽内でも自然に発生します。よく動物や植物の死骸が「土に還る」などという表現をされますが、これも実はバクテリアが関係しており、地球上の生命をつないでいる大事な存在なのです。
バクテリアの種類・役割
バクテリアには大きく分けて以下の2種類があります。
十分な酸素が存在し、水の流れがある環境を好んで増殖します。働きとしては、酸素を消費して硝化を行います。硝化は水槽内の毒素(生体のフンから発生する有毒なアンモニアなど)を分解(アンモニア→亜硝酸→硝酸)して無害化する役割があります。毒素が少ない水槽では当然生体が生き生きと泳ぎ、水がキラキラと輝いて見える傾向にあります。
酸素が少ない場所、つまり水の流れが悪い場所で増殖します。このバクテリアは水質を悪化させる物質を作り出す為、嫌気性細菌が繁殖してしまうと水質の悪化から生体が病気にかかりやすくなったり、水槽内に悪影響を及ぼします。
アクアリウムでは好気性細菌が多ければ多いほどいい環境が作れる、とされています。上でも触れた「土に還る」という表現は自然の中で当たり前のように行われている、このようなバクテリアの分解する働きを現したものなのです。つまり水槽内でも同様で、好気性細菌が毒素を分解してくれているから、そこに循環が生まれて水質が悪化することなく良い状態が保たれる訳です。
このサイトでも「消灯時はエアレーションをしましょう!」としきりに言っておりますが、これは好気性バクテリアが大量の酸素を消費するという事と、好気性バクテリアが酸素が多い環境で増殖するという性質を狙っての事です。特に照明点灯時にCO2添加を行っている場合は消灯時にエアレーションで十分な酸素を供給してあげる事を強くオススメします。
エアレーションをするならオススメ!
バクテリア(好気性細菌)はどうやって増やす?
では水槽内の水質浄化に有効なバクテリア(好気性細菌)をどうやって増やすのか。それは底床(土壌づくり)とフィルター(ろ過)が重要になってきます。
好気性細菌は酸素が多く存在する環境を好んで増殖します。つまりエアレーションで水槽内に十分な酸素を供給し、水の通りを良くしてあげる事が大切です。水の通りが悪いという事は、酸素を含んだ水が行き届かないという事になります。つまり嫌気性細菌が繁殖してしまう為、水の通りを良くする必要があります。
水の通りを考える前に、まずは地球の大地を思い出してみましょう。
地表はサラサラの砂があっても、下へ下へと掘り進めていくと砂利が出てきて、さらに掘り進めると大きめの石が出てきて……と、下へ行くほど大きく、何層にも重なっている事はご存知の事と思います。「この辺りは水はけが良いねぇ!」なんて話を聞きますが、それは地表に落ちた水が下へ下へと素早く浸透するように土壌が最高のバランスで出来上がっているからなのです。
そんなバランスを水槽内に表現しようとするとこうなります。
底に大きめの軽石、軽石の上にはノーマルサイズのソイル、ノーマルサイズのソイルの上にはさらに細かいパウダーサイズのソイルです。下に行くほど大きくなっていて、軽石同士の間にちょっとした隙間ができています。こうする事で水が底の方まで行き渡り、好気性バクテリアが土壌に増殖してくれます。
例えば配置が逆になった時を考えると、一番上の軽石の重みで一番下のパウダーサイズのソイル、つづいてノーマルサイズのソイルが潰れて粉々になり、隙間なくビッシリと底に敷き詰められ、目詰まりを起こすでしょう。つまり底の方に水が通りにくくなり、酸素が供給されず、逆に嫌気性のバクテリアが繁殖してしまう事になってしまいます。
続いてバクテリアが一番多く住み着くであろうフィルター内のろ過についてです。
エーハイムの有名なろ材ですが、ろ材がこのような形になっているのにも意味があります。
リング状ろ材=水の通りを良くする為(水がフィルター内に拡散される)
ボール状ろ材=細かい穴が空いており、バクテリアの住処として最適
つまり水槽内の汚れた水がフィルターに流れてきた時、リング状ろ材がフィルター内に水を拡散させながら、ボール状ろ材に住み着いたバクテリア(好気性細菌)達が毒素を分解し、綺麗になった水が水槽内に戻るという流れですね。非常に優れたろ材だと思います。
バクテリア剤ってどうなの?
市販ではバクテリアの素としてバクテリア剤なるものが販売されていますが、「これ無意味じゃね?」などの意見も出ており、正直効果のほどは分かりません。バクテリアは水槽内に自然に発生するものなので使わなくても良い、という考え方もあれば「バクテリアが増殖するのを待っていられない!早く立ち上げたい!」という理由でバクテリア剤を使う方もいます。
まとめ
水質浄化に大切なバクテリア(好気性細菌)は、①十分な酸素を供給してあげること、②水の通りを良くしてあげることで水槽内で増殖していきます。バクテリア(好気性細菌)が増殖した水槽は水質も安定し、たまに行う水替えだけでも長期維持が可能です。
バクテリアはアクアリウムをする上でとても大切な存在です。目には見えない存在ですが、一生懸命働いてくれています。バクテリアを大切にできる方の水槽は、きっとどれも美しいハズです。
アクアリストとして、この小さな命達も含めて大切に育てていきたいものです。